産後すぐの引越しは可能なら避けたほうが無難ですが、どうしても避けられない事情によって引っ越さなければならない…そんな場合もあります。
産後すぐの引越しは、自分自身と赤ちゃんの体調、出産に伴う手続きなどさまざまな問題を考えなくてはならないため、その時期をよく考慮する必要が出てきます。
今回は、産後すぐの引越しにおいて覚えておかなければならない点をいくつか紹介してみます。
目次
産後すぐ…ってどのタイミングならOK?
産後すぐの産婦の体は、外見からはわかりませんがまだまだ正常なものではありません。
子宮の機能はもちろん、その他の臓器や体全体にかかってきた大きな負荷、それらが取り除かれてもとの機能を完全に取り戻すまでには早くても1ヶ月、人によってはそれ以上にかかる場合があります。
それらを考慮すると、産後すぐに引越しをする場合のその時期とタイミングは、「母体が落ち着く時期」を選択するのが最も良いと言えそうです。
昔から、産後すぐの産婦には「水仕事をさせるな」と言われていますが、これには産後の母体が元の機能を取り戻すまでは決して無理をしてはいけないという意味が込められています。
水仕事云々という話は、井戸水が主流で水道がまだ当たり前の存在になっていない頃のものなので今の時代にはそぐわない内容になっていますが、それでも無理をして家事をこなすと後でそのツケが回ってきてしまう可能性があるので《安静にする必要がある》という意味では今も昔も同じと言えます。
女性の体は見かけによらず華奢で繊細にできています。
若いうちは体力もあり自信もあるので「大丈夫」と無理をしがちですが、40代、50代以降の時期に来ると「あの頃の無理がたたったのかな」と思うほど体が動かなくなっていくものなんですよ。
実際、筆者も若い頃は何も考えておらず、周囲から「無理をしてはいけない」と言われても無理をせざるを得なかったため安静にする時期を持てませんでした。
そのせいか、今は思うように動くこともできず…後悔しています。
また、母体だけでなく赤ちゃんの体調も考えなくてはなりません。
生まれてすぐの赤ちゃんは、1ヶ月ほどの間は日光にさらすことができません。
その間は外気浴と言って、外の風に少し当ててあげる程度にとどめるよう指導されています。
さらに生後3~4ヶ月前後にははじめての予防接種や検診も始まります。
これらを総合的に考えると、
- 母体が落ち着く頃
- 赤ちゃんが外気にさらされても大丈夫な頃
- 予防接種や検診のスケジュールに支障のない時期
といった事を考慮した時期に、タイミングを見計らって引っ越すのが良いと言うことになりそうですね。
引っ越したら病院が変わる?
産後すぐの引越しには、引越しをすることで病院が変わってしまうという不安がついて回ります。
引越し先が比較的近場で病院の変更をしなくて済む場合は良いのですが、そうでない場合は不安でいっぱいになってしまいますよね。
こうした不安も考慮すると、産後すぐの引越しは母体や赤ちゃんの1ヶ月検診が済んでからにするのが良いと言えます。
また、引越しをした場合もできるだけ早く、受診できそうな産婦人科や小児科を見つけておけば安心です。
とは言え、病院選びはとても難しく、なかなか良い病院と出会える事は多くありません。
正直、失敗のほうが多いと言う現実もありますよね。
そこで、引越し前の病院で主治医の先生に相談して、どこか紹介してもらうのもひとつの方法です。
できれば紹介状を書いてもらうなどすると安心できます。
病院が変わっても、これまでの経緯や出産の状況などが把握できていれば対応はしてもらえますし、紹介状もない状態でいきなり受診するよりは安心感がありますよね。
もっとも、母体のほうは1ヶ月の検診で異常がなければそこで受診は終了するので、心配なのは小児科…だけになるでしょう。
産後の手続きに関して
産後すぐに行う手続きはいくつかありますが、それらの手続きは一定期間内に行えば良いとされています。
出生届の提出
しゅっしょうとどけ、と読みます。
赤ちゃんが生まれてから14日以内に、住民票のある市区町村役所に提出します。
届出は原則として両親またはそのどちらかが行うとされていますが、場合によっては祖父母などの代理人でも可としています。
持ち物:印鑑・母子手帳・出生証明書(病院発行)
健康保険への加入
赤ちゃんが生まれたらすぐに健康保険に加入します。
社会保険(会社勤めをしている)の場合は勤務先に書類を提出、国民健康保険の場合は市区町村役所の窓口で手続きをしますが、一般的には1ヶ月検診までの間に手続きを行うこととされています。
持ち物:印鑑・母子手帳・健康保険証・出生届のコピー
乳児医療費助成制度の手続き
病院を受診した際の医療費や、薬局で薬を処方された場合の薬代が無料または一定額になる制度です。
自治体によって収入制限などが設けられている可能性もあるため、確認が必要です。
また、届出の期限は1ヶ月検診までの間というのが一般的です。
持ち物:印鑑・母子手帳・赤ちゃんの名義の健康保険証・預金通帳など口座番号のわかるもの
児童手当の手続き
中学生までを対象として支給される手当です。
年齢によって支給額が異なり、また、子供の人数によっても支給額が異なるため確認が必要です。
また、所得制限などが設けられていることがあるので、その点も確認しておきましょう。
手続きを忘れると、さかのぼって請求することはできないので、注意が必要です。
手続きは出生後15日以内に行うこととされていますので、出生届の際に一緒にやってしまうと良いでしょう。
持ち物:印鑑・健康保険証・預金通帳など口座番号のわかるもの・課税証明書
出産育児一時金の手続き
出産をすると、一律42万円というお金が支給されることになっています。
会社勤めの場合は加入している社会保険から、国民健康保険の場合はそちらから、支給されます。
手続きは、会社勤めの場合は会社に書類を提出し、国民健康保険の場合は市区町村役所の窓口に書類を提出します。
持ち物:印鑑・健康保険証・領収書または出産にかかわる明細書のコピー・出生したことを証明できる書類・医療機関との合意書・出産育児一時金請求書
これらの出産にかかわる手続きは、出生後一定期間内に行わなければなりません。
ですので、産後すぐに引越しをする場合は引越し先で手続きを…ということも可能かもしれませんが、出生から14日以内に出生届を提出することになっているので、入院期間が長引いたりした場合は時間的な余裕がなくなってしまう可能性もあります。
ただ、そういったことのスケジュールがうまく調整できれば、産後すぐに引越し…それこそ退院と同時に新居へ入居でも可能と言えます。
その場合は転出や転入の手続きも出生関連の手続きと同時にやってしまえば楽かもしれません。
仕事を持っているママなら、保育園の入園申し込みも同時に行いましょう。
ただし、家族がそれらの手続きに走り回ってくれることが前提となってしまいますが…。
精神的負担が大きくなる可能性
産後うつという言葉があります。
初めての出産を経験した人に多いのですが、慣れない育児、思うようにいかない家事、津kれやストレスがたまって精神的な負担が大きくなり、うつに発展してしまうケースです。
多かれ少なかれ、出産を経験した人のほとんどが経験している産後うつですが、ひどくなると死にたいとまで考えてしまう事もあるので、決して軽視できるものではありません。
そんな産後うつを発症・悪化させる原因にもなりうるのが、引越しです。
赤ちゃんの世話で手一杯、ほかの事なんてやる余裕もないのに引越し、さらに新しい環境に慣れなくてはいけない…もう、八方塞とはこのことをさすのでしょう。
筆者は生後5ヶ月の赤ん坊を抱えて離婚、引越しをした経験があります。
今思えば世の中全てが敵に思えていた時期でした。
精神状態が正常ではなかったのだろうと思いますが、つらく苦しい時期だったんですよね。
産後すぐの子供がいる環境・育児に慣れない時期に、自分の身をおく環境を変えてしまうというのは、ストレスを増大させる結果となりかねません。
そういった意味も含めて、産後の引越しのタイミングは家族でよく検討していく必要がありそうですよ。